小悪魔agehaという雑誌に度肝を抜かれた

コンビニをふらふらしてましたら、なんとなく目に入っちゃったのが、とある雑誌のこんなコピー。

息をするのも疲れるけど、
この街の
ネオンの下を選んだ。


ここが私たちの
本当の目的地ではないけれど

……おいおい、これなんて「ぬかるみの女」?


小悪魔agehaという雑誌です。

小悪魔 ageha (アゲハ) 2008年 11月号 [雑誌]

小悪魔 ageha (アゲハ) 2008年 11月号 [雑誌]

生きている乳酸菌と死菌
小悪魔ageha - Wikipedia


前にも見たことがあったけど……う〜ん、こんなぬかるみなノリだったっけ?と思いつつ、
ぱらっとめくってみると……特集記事は「私たちが今、生きている街'08」。
これがまたすごかった。
札幌・仙台・新潟・千葉・銀座・六本木・歌舞伎町・静岡・名古屋・祇園・北新地・ミナミ・神戸・広島・山口。
それぞれの街で「生きている」女の子たちのポートレート、なのだが。

まず一歩踏み出せってみんな言うけど
何に向かって歩き出せばいいの?
(北海道出身 フリーター18歳 黒瀧まりあ)
《小悪魔ageha2008年11月号 p50》

どこの街へ行っても
結局はひとり…
(岩手県出身 仙台国分町クラブAI勤務21歳 純恋)
《小悪魔ageha2008年11月号 p51》

親に勘当されて漫喫で寝泊りして…
野良犬だったあたしの新宿デビュー
(中略)
簡単に色かけたり簡単に騙したり簡単に裏切ったり、
こんな汚い街大っ嫌い。
(東京都出身 歌舞伎町レビュー勤務21歳 りん)
《小悪魔ageha2008年11月号 p55》

夜職は生きていくには困らないけど、
高い物は気楽に買えない。
(中略)
この街には、ヒルズ族とか大富豪とかが
いるわけじゃないから。
(新潟県出身 新潟ルナージュ勤務25歳 木村るい)
《小悪魔ageha2008年11月号 p57》

生まれた場所がたまたま静岡なだけ。
そこが九州だったとしても、
私は地元から
一生出ない人間なんだ
(静岡県出身 agehaモデル27歳 桃華絵里)
《小悪魔ageha2008年11月号 p62》


こんな「ぬかるみ」な、というか、
やりきれなさとある種の諦念が入り混じったような言葉と一緒に、
ぴかぴかできらきらの女の子たちが、ポーズを決めている。
ギャグではなく「リアルな毎日」を表現する『街の方言』や、
いまその街で流行っている『盛り(=ボリュームのあるヘアスタイル)』なんて感じの
ミニコラムが、さらにページ全体をポップにしている。


ページのポップ感と、女の子たちの言葉のギャップ……
いや、違う。
キャバにお金を稼ぎに行く「安易な女の子たち」のイメージと、
そこで切り取られているリアルな『age嬢(=小悪魔agehaの読者モデル)』のポートレートが、
あまりにも違いすぎたことに、
私はなんというか、「貧困の発見」並の衝撃を受けた気がしちゃったんでした。
若干の編集脚色があるにせよ。


先日、どこぞの民放で、「最近の女の子たちは水商売に勤めることに抵抗が少なくなっている。
その証拠に、水商売専門の職業紹介所が人気です」ってな調子でリポートしていたのを見たのだが。
現実は、そんな生易しいもんじゃなさそうだよどうやら。


で……思わず買っちまいましたよ。小悪魔ageha


雑誌の内容は、だいたい18歳以上20代の女の子を中心に、
夜の街でも映えるような派手目の『ageha』スタイルの
メイクやヘア、ファッション情報が中心。
ageha』スタイルを好む女の子たちを『ちょうちょ』と呼び、
彼女たちがあこがれる存在としての読者モデルを『age嬢』と呼ぶ。


『age嬢』たちは、フリーターとかエステティシャンの子たちもいるけど、
多くはキャバ嬢。
メイクやヘアは、自分でできるようにすごく丁寧に紹介してあって、
そのほぼ全てで『age嬢』たちがモデルになっている。
ファッションは『ageha』スタイルでの有名ブランドもあるようだけど、
ほとんどが¥10000-以内で買える設定だ。


特徴的だなぁ、と思ったのが、
「彼氏をどうやってゲットする?」とか、「恋の悩み!」とかのページがほとんど見当たらないこと。
さらに、キャバの情報は「ちょうちょの夜服」の情報ぐらいで、接客の悩み、なんかも見当たらない。
(11月号では体験入店の体験談があったけど、これも写真名刺を意識したage嬢の写真がほとんど。)
つまり、男絡みや生々しい職場体験で読者の生の声を引き出すようなページが
ほとんどないのだ。
そのかわり、age嬢的シングルマザー『シンママ同盟』なるページで、
きらきらのちょうちょ達が、子供のことを語るページがある。
『シンママ同盟』では、別のページできらきらに光っていたage嬢も、
今度は自分の子供と、ぱっちり笑顔で登場していたりする。


学歴を重ねられる見通しも、コネで就職・縁談に恵まれるような見通しもない女の子。
そんな女の子の夢が、もしかしたら、この雑誌に詰まっているのかもしれないな、
なんて思ったりしました。
(この大学全入時代、大学に行けないのは主にお金が理由になっていると思います。裏とってませんが)


親にお金がなくても、若さだけは、自分にもある。
その若さを、きらきらのメイクやファッションで飾って『ageha』になることなら、
自分にもできる。
キャバに飛び込めば、大金持ちになれなくても、『ageha』になれる間、バッグや服を買うことぐらいはできる。
よくわからないうちに子供ができちゃったけど、ここからでも『ageha』になって輝くことはできる。
若いうちなら。


そういう気持ちなのかな。
いやー……なんというか。
小悪魔agehaを抱きしめて眠る17歳のワタシとか、いたかもしれないな、と思ったりして。
だって、なんちゃ変わらんもんね。
ワタシはたまたま、大学にたどり着けるお金がなんとかなっただけで。
今17なら、多分うちから医学部出し切れるお金は出なかったよ。
奨学金とバイトでは、ぶっちゃけ無理だからね。大学出るの。
そんで、大学を出て仕事をしちゃっているワタシは、
知り合いの高卒の女の子を、そんなにたくさん思い浮かべることができない。


11月号の表紙の女の子は、
昼間の仕事がうまくいきそうなので、夜の仕事を辞めることになったそうで。
5ページにわたって、彼女の『夜職卒業祝』ページが組まれています。

夜職一筋貫いて
生きてゆこうとおもったが
太陽見ぬまま終われはしない
昼職人生、いざ勝負!!!


夜の世界で生きていくって思ってた。
だって昼の世界は眩しくて、
自分の居場所が分からなかった…。
だからこそ、今…思いっきり賽を投げる


《小悪魔ageha2008年11月号 p65》


5ページ目の写真に
「泣いてないよ、煙が目にしみただけ」
というコピーがついているんだが。
……あたしゃちかごろ、こんな本気のSmoke Gets in MY Eyesに触れたことがなかったよ……


彼女達が思う存分輝いて、自殺しないで済む程度の努力で子供を育てきることができる世の中に。
なるといいねえ。しないとねえ。



Smoke Gets in Your Eyes

Smoke Gets in Your Eyes

小悪魔 ageha (アゲハ) 2008年 11月号 [雑誌]

小悪魔 ageha (アゲハ) 2008年 11月号 [雑誌]